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秘密証書遺言とは?正しい作成方法と、利用すべき場面を弁護士が解説!

  • 相続問題

公開日:

「遺言をしておいたら、将来自分が死亡した後、子供たちが相続争いするのを効果的に避けることができる」

そのようなことを聞いたから、「遺言書を作ろうかなぁ…」、と考えている方は、たくさんいらっしゃるのではないでしょうか?

最近、少子高齢化社会が進んでいることなどもあって、遺産相続対策に関心を持つ方がとても増えています。遺言をするときには、自筆証書遺言と公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類がありますが、秘密証書遺言は耳なじみが少なく、あまりよく知らないという方が多いでしょう。

今回は、秘密証書遺言とはどのようなもので、どのようにして作成するのかや、利用すべき場面を弁護士法人YMPの弁護士が解説します。

秘密証書遺言とは

秘密証書遺言とは、内容を秘密にしたまま存在だけを公証役場で認証してもらうタイプの遺言です。

秘密証書遺言を作成するときには、遺言者が自分で遺言書を作成し、それを封筒に入れて封入し、公証役場に持参します。すると、公証人が、その封筒を開けないまま、その遺言書の存在を認証してくれます。このように、相続人が自分で封をした後公証人に示すので、公証人が中身の遺言書を目にすることはありません。このことで、遺言内容を秘密にすることができます。

また、公証役場で認証を受けて印を押してもらうことができるので、遺言書の存在については、きちんと証明することができます。後から相続人が「誰かが勝手に偽造したものだ」と言っても、そういった主張は通りにくくなります。

これが、秘密証書遺言の概要です。

秘密証書遺言の特徴

秘密証書遺言には、どういった特徴があるのでしょうか?以下で、見ていきましょう。

遺言内容を誰にも知られない

まずは、遺言内容を誰にも知られないことです。

自筆証書遺言の場合には、遺言者が自分で遺言書を作成して自宅に保管しているので、同居人や相続人などが発見して、中身を見てしまうかもしれません。公正証書遺言の場合には、遺言書を公証人に作成してもらわないといけないので、公証人には必ずその内容を知られてしまいますし、証人にも見られてしまいます。また、公証役場でもらった正本や謄本(写しのこと)を自宅で保管している間に、同居者などが発見してしまうおそれもあります。

これらの遺言書に対し、秘密証書遺言なら、はじめから封入した状態で公証役場に持っていくので、公証人や証人にすら中身を見られることはありません。また、自宅に保管している間に同居人等が見ようとしたら、開封するしかありませんが、開封されたら後が残るので、開封されたことが明らかにわかります。そうなると、遺言書は無効になります。そこで、秘密証書遺言が有効なときには、誰にも内容を知られていないことになるのです。

遺言の存在を公証人が認証する

秘密証書遺言は、遺言書の「存在」を公証人が認証してくれる点が、大きな特徴となっています。

自筆証書遺言は、誰も何の証明もしてくれません。遺言者が勝手に作成して、自宅やその他の場所に保管しているだけです。公正証書遺言の場合には、公証人が作成するので、存在だけではなく内容まで公証人が認証します。

これに対し、秘密証書遺言の場合には、内容を公証人に示さないので、存在だけを認証してもらうことができます。

秘密証書遺言の作り方

秘密証書遺言の作成方法を見てみましょう。

まずは、遺言を書く

まずは、遺言者が遺言を書きます。このとき、パソコンで書面を作成することもできます。自筆証書遺言の場合には全文自筆で作成しなければなりませんが、秘密証書遺言の場合、そういった制限はありません。

ただし、遺言者の署名押印は自筆で行う必要があります。印鑑は、実印に限らず認印でも有効です。

封入して、押印する

遺言書が書けたら、それを封筒に入れて封をします。そして、封筒の継ぎ目の部分に、遺言書に押印したのと同じ印鑑で押印しましょう。遺言書に押したのと違う印鑑を利用すると、秘密証書遺言としては、遺言書が無効になってしまうので注意が必要です。

証人を用意する

秘密証書遺言を作成するときには、証人を2名用意する必要があります。心当たりの人がいる場合には、声をかけて協力してもらいましょう。いない場合には、公証役場で紹介してもらうことも可能です。なお、証人にも遺言書の中身を知られることはありません。

公証役場に遺言書を持参し、遺言書を作成する

遺言書と証人を用意することができたら、公証役場に遺言書を持参します。このとき、遺言書に押印したものと同じ印鑑を持参しましょう。証人を用意した場合には、一緒に来てもらう必要があります。

公証役場では、公証人と証人に対し、遺言書が封入されていることと、住所氏名を告げます。そして、公証人が日付と申述内容を封筒に記載します。そして、遺言者と証人2名が署名押印すると、秘密証書遺言ができあがります。後は、返還してもらった遺言書を自宅に持ち帰り、保管しておくだけです。

秘密証書遺言を作成できる場所

秘密証書遺言は、全国どこの公証役場でも作成することができます。
全国の公証役場一覧

秘密証書遺言作成にかかる費用

秘密証書遺言を作成するときには、費用がかかります。遺言内容にかかわりなく、一律で11,000円が必要です。遺言書を作成したときに、公証人に対して現金で支払う必要があるので、当日は支払い用のお金も持参しましょう。

秘密証書遺言作成の際の注意点

秘密証書遺言を作成するときには、以下のような点に注意が必要です。

財産の特定

まず、重要なことが財産の特定です。財産がきちんと特定されていなければ、遺言内容が意味を持たなくなります。預貯金なら、金融機関名と支店名、口座番号まで特定しましょう。不動産なら、全部事項証明書の表題部の記載をそのまま引き写します。株式の場合には、銘柄や株式の数を間違いのないように記載しましょう。

遺言内容を明確にする

次に、遺言内容は明確に書いておくことが重要です。誰にどの遺産を相続させたいのか、または遺贈したいのかを明確に記載しましょう。相続人や受遺者の氏名を間違えないようにして、自分との関係なども書いておくと良いでしょう。たとえば「妻〇〇 〇〇に対し、以下の不動産を相続させる」などと記載します。

遺留分に注意する

遺言によって法定相続人の遺留分を侵害すると、遺留分減殺請求が起こって相続争いが発生してしまいます。そこで、法定相続分の遺留分に配慮して、遺留分を侵害しないように計算して遺言内容を決定しましょう。

遺言執行者を指定する

遺言内容を確実に実現するためには、遺言執行者を指定しておくことが有効です。遺言執行者を指定しておくと、遺言執行者が不動産の名義書換や預貯金の払い戻し、寄付行為や子供の認知、相続人の廃除などの手続きを行います。

遺言執行者には、信頼できる人を指定しておくべきです。弁護士に依頼することもできるので、検討してみるのも良いでしょう。遺言執行者を指定するときには、対象者の氏名と住所を明確にして、「〇〇を遺言執行者として指定する」などと記載しましょう。

署名押印を忘れない

秘密証書遺言を作成するときには、パソコン等で書類作成することがあり、最後に署名押印をするのを忘れてしまうことがあります。しかし、署名押印をしないと遺言書は無効になってしまうので、必ず最後に署名押印を忘れないようにしましょう。

秘密証書遺言のメリット

秘密証書遺言には、以下のようなメリットがあります。

内容を秘密にできる

まずは、遺言内容を秘密にできることです。たとえば、隠し子がいて認知したいけれども、表だって認知したら、家族との間でトラブルが予想されるケースなどがあります。このような場合、秘密証書遺言を利用することにより、死ぬまで確実に秘密にしておくことができますし、子供には遺産を残すことができます。

パソコンで文書作成できる

次に、パソコンで文書作成できることです。

今は、多くの人がパソコンでの文書作成を当たり前にしており、手書きで文書を作成する機会がほとんどありません。秘密証書遺言の場合、本文は自筆でなくても良いので、ワープロやパソコンで簡単に文書を作成できて、便利です。

自筆証書遺言よりは無効になりにくい

秘密証書遺言は、自筆証書遺言よりは無効になりにくいです。自筆証書遺言は、本当に何の証明もないので、いったん誰が書いたかが疑われると、無効になってしまうおそれがかなり高くなります。これに対し、秘密証書遺言の場合には、少なくとも存在については公証人が認証してくれるので、将来一部の法定相続人が、「全くの偽造」であるとか、「遺言者が作成に一切関与していない」などの主張をしても通りません。

秘密証書遺言のデメリット

次に、秘密証書遺言のデメリットを確認していきましょう。

費用がかかる

まず、費用がかかることです。自筆証書遺言なら無料ですが、秘密証書遺言の場合には手数料が11,000円必要ですし、証人を紹介してもらったらさらに費用(証人の日当)がかかります。

手間がかかる

秘密証書遺言を作成するときには、公証役場に申込みをして日にちを決め、当日公証役場に行って手続きをしないといけません。このように、手間がかかることも、デメリットの1つと言えるでしょう。

証人が必要

秘密証書遺言では、2人の証人が必要です。探すのも手間ですし、その日に公証役場に来てもらわないといけないので、面倒をかけることになります。かといって、公証役場で紹介を受けると費用がかかってしまいます。このことも、秘密証書遺言の
デメリットの1つと言えるでしょう。

紛失のおそれ

秘密証書遺言を作成したら、保管するのは遺言者本人です。公正証書遺言のように、公証役場で原本を保管してくれることはありません。そこで、遺言者がその秘密証書遺言を紛失したら、もはや秘密証書遺言の内容を実現する手立てがなくなってしまいます。

秘密証書遺言は、検認が必要

秘密証書遺言が残された場合、相続人は、遺言書の検認を受ける必要があります。検認とは、家庭裁判所で遺言書の状態や内容を確認してもらう手続きです。

公正証書遺言の場合には検認が不要ですが、秘密証書遺言の場合、内容を公証人に確認してもらっていないので、検認を受けなければなりません。このように相続人に余計な手間がかかることも、秘密証書遺言のデメリットと言えるでしょう。

公正証書遺言よりも無効になりやすい

秘密証書遺言は、公正証書遺言より無効になりやすいです。公正証書遺言の場合なら、公証人が作成するので、趣旨のわからない遺言が残されることはありませんし、要式違反も起こりません。これに対し、秘密証書遺言の場合、遺言者が自分で文書作成をして封入してしまうので、間違った内容が記載されていたり法的に意味の無いことが書かれていたりしても、修正されることがありません。また、遺言書と封筒に違う印鑑が使われることもあります。そうなると、秘密証書遺言は無効になってしまいます。

秘密証書遺言が無効になった場合の効果

秘密証書遺言が無効になったとき、自筆証書遺言としての効果が認められることがあります。それは、秘密証書遺言としての要件は欠いているけれども、自筆証書遺言としての要件を満たしている場合です。

たとえば、資格のない人を証人にしてしまったら、秘密証書遺言としての効果は認められません。ただ、中の遺言書が全文自筆で書かれていて、自筆証書遺言としての要件を満たしていたら、自筆証書遺言としては効果が認められます。

そこで、秘密証書遺言を作成するとき、パソコンなどで文書作成をすることもできますが、できれば万一の場合に備えて自筆で作成し、自筆証書遺言としての要件を備えておくことをお勧めします。

秘密証書遺言と自筆証書遺言、公正証書遺言の比較

秘密証書遺言と自筆証書遺言、公正証書遺言の違いを、わかりやすく比較表にしました。

自筆証書遺言 公正証書遺言 秘密証書遺言
遺言書の作成者 遺言者本人(全文自筆) 公証人 遺言者本人
自筆が必要か 必要 不要 不要(パソコン、代筆可)
遺言書の作成場所 どこでも 公証役場 どこでも作成できるが、公証人役場に持参する必要がある
遺言書の保管方法 遺言者が保管する 公証役場で原本が保管される 遺言者が保管する
証人の要否 不要 必要 必要
公証役場での認証内容 なし 存在と内容 存在のみ
費用 不要 手数料が5000円~。遺産の価格に応じて数十万円かかることもある。 一律で11,000円

秘密証書遺言の作成が向いている人

秘密証書遺言の作成をお勧めするのは、以下のような方です。

家族には言っていない子供がいるので、遺言によって認知したい

遺言によって認知をすることができます。生前に子供がいることを家族に知られるとトラブルになる場合などには、秘密証書遺言を利用すると良いでしょう。この場合、必ず遺言執行者を選任しておく必要があります。

生前には家族ともめたくないが、遺言によって相続人の廃除、または取消をしたい

非行のある相続人がいる場合、相続人の廃除をすることで、相続の資格を奪うことができます。ただ、生前に相続人の廃除をすると、該当の相続人とトラブルになる可能性があります。そこで、遺言によって相続人の廃除をすることができます。また、既に相続人の廃除をしているとき、その取消も可能です。生前に取消をすると、他の相続人との間でトラブルが起こりそうな場合などには、遺言によって相続人の廃除をすると良いでしょう。

この場合、必ず遺言執行者を選任しておく必要があります。

愛人など、家族に知られたくない人に遺産を残したい

愛人その他の第三者に遺産を残したいけれども、そのことを今の家族に知られるとトラブルになりそうなケースがあります。そういったときにも秘密証書遺言が役立ちます。

パソコンで遺言書を作成したい

秘密証書遺言はパソコンや代筆で文書作成ができます。

その他、遺言内容を絶対に人に知られたくない事情がある

遺言書の作成は、弁護士にお任せください

今回は、秘密証書遺言について解説しました。秘密証書遺言は、内容を秘密にすることができるメリットがありますが、費用や手間がかかるデメリットもあります。

遺言をするときには、ご自身の状況に合った適切な方法を選択すべきです。自分ではどういった方法が向いているかがわからない場合、弁護士が適切な方法をアドバイスをいたします。

弁護士法人YMPは、遺産相続問題を非常に得意とする専門事務所ですので、遺言作成をご検討されているなら、まずは一度、お気軽にご相談下さい。