遺産分割調停の流れと有利に進める方法を解説!
- 相続問題
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遺産分割を進めるとき、遺産分割協議をしても相続人同士の意見が合わず、調停が必要になることが多いです。遺産分割調停では、どのようにして話合いが行われるのでしょうか?申立方法から解決までの流れと、遺産分割調停を有利に進める方法についても、押さえておきましょう。
今回は、遺産分割を行うときに知っておきたい、遺産分割調停の流れと有利に進める方法を解説します。
遺産分割調停とは
遺産分割調停というと、みなさまはどのようなイメージを持たれるでしょうか?「裁判所を利用しているくらいだから、自分たちでは解決できない、トラブルになったケース」だと思っていることも多いかもしれません。
ただ、遺産分割調停は、基本的に争いの場ではありません。確かに、遺産分割協議では解決ができなかった事案が中心になりますが、調停自体は、あくまで話合いの場です。遺産分割調停は、家庭裁判所の関与のもと、当事者同士が話し合い、遺産分割方法について合意をする手続きです。
遺産分割調停をすると、家庭裁判所の調停委員が間に入ってくれるので、対立している当事者同士が直接顔を合わせて話をする必要がありません。このことで、お互いが感情的になるのを抑えて冷静に対応し、合意に向けて進めていくことができます。
遺産分割調停を利用しているのは、どんなケース?
それでは、実際に遺産分割調停が利用されているのは、どういったケースが多いのでしょうか?一般的に、「調停をするほどのケースであれば、相当に遺産の額が多い、富裕層の家庭の問題ではないか?」と思われていることが多いです。
しかし、実際に遺産分割調停が利用されているのは、むしろ一般の中流階級の家庭です。平成27年度の司法統計によると、遺産の額での分類では、遺産分割調停で最も多かったのは遺産総額が1000万円~5000万円のケースで、全体の43.0%を占めています。次が、遺産総額が1000万円以下のケースで、全体の31.9%となっています。遺産の額が1億円を超えるケースは、全体の12%程度しかありません。
このように、遺産総額が5000万円以下の中流家庭での調停が、全体の75%近くにも及んでいるのです。
遺産分割調停は、みなさまにとっても決して人ごとではありません。
遺産分割調停の流れ
以下で、遺産分割調停の流れを確認していきましょう。
申立
まずは、遺産分割調停の申立を行います。調停の当事者は、申立人と相手方です。遺産分割調停では、申立人か相手方のどちらかに、相続人が全員入っている必要があります。たとえもめていない相続人がいる場合にも、遺産分割調停の当事者になってもらう必要があるということです。一般的に、自分と意見の合う相続人と一緒に申立人となり、意見の対立している相続人を相手方として調停を申し立てます。
家庭裁判所の管轄は、相手方の住所地を管轄する裁判所となります。相手方が複数いる場合には、そのうち一人の住所地を管轄する裁判所を選びます。
申立の際には、調停申立書を作成して、家庭裁判所に提出します。調停申立書は、家庭裁判所に書式があるので、利用すると良いでしょう。
http://www.courts.go.jp/vcms_lf/20-1m-isanbunkatsu.pdf
必要書類
遺産分割調停を申し立てる際、以下の書類が必要です。
- 被相続人の出生から死亡するまでの全ての戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍謄本
- 相続人全員分の戸籍謄本
- 相続人全員分の住民票または戸籍の附票
- 遺産に関する資料
固定資産税評価証明書や不動産全部事項証明書、預貯金通帳、残高証明書、車検証、株式の預かり証などの資料です。
- 配偶者と兄弟姉妹が相続をするケースでは、親の出生から死亡時までのすべての戸籍謄本類
- 代襲相続が起こっている場合には、被代襲者の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本類
- 相続関係説明図
相続人調査にもとづいて、申立人が作成します。
- 遺産目録
相続財産調査にもとづいて、申立人が作成します。
費用
遺産分割調停にかかる費用は、被相続人1名について1200円です。それと、郵送用の郵便切手が数千円分必要です。
調停期日の進み方
遺産分割調停を申し立てると、担当の調停委員と調停官が決まります。そして、第一回の調停期日が指定されます。調停期日には、申立人と相手方の双方が呼出を受けています。
家庭裁判所に行くと、申立人と相手方は、それぞれ別の待合室で待機します。そして、交互に呼出を受けて、調停委員に自分の意見を伝えます。当事者が自分で相手に意見を伝えるのではなく、調停委員を介して伝え、伝えられることになります。
調停は、午前または午後に行われ、一回の調停にかかる時間は2~3時間程度です。調停が一回で終わることはほとんどなく、月1回程度のペースで、数回繰り返させることが普通です。
東京家庭裁判所での遺産分割調停の進め方
東京家庭裁判所では、長びきがちな遺産分割調停を早期に解決することを目標にして、遺産分割調停の進め方についてのルールを定めています。
基本的に、調停期日の3回目、5回目、7回目の終了後には、調停委員と調停官が協議をして、進行状況を確認します。そして、5回目の評議の際にどのような争点があるのかを整理して、6回目、7回目はなるべく詰めた日程で開催します。調停を行う回数は7回を目途とし、7回目終了後は、調停の終了を視野に入れて評議を行います。
8回目が終了しても調停が成立しない場合には、調停が成立していない原因を確認し、状況次第で調停を不成立にするかどうかを検討します。
このようにして、なるべく1年以内に遺産分割調停を終了させようとする運用をしています。
調停成立または不成立
遺産分割調停の期日を繰り返していき、最終的に相続人全員が合意することができたら、調停が成立します。調停が成立すると、裁判官がすべての相続人を同じ部屋に集めて、合意した内容を読み上げて確認していきます。間違いが無ければ、その日の手続きは終わり、解散します。そして、後日、家庭裁判所から調停調書が送られてきます。調停調書には、当事者が押印する必要はありません。送られてきた調停調書を使って不動産の名義書換や預貯金の払い戻しなどの必要な相続手続きを行うことができます。
これに対し、何度話合いを繰り返しても合意ができない場合には、それ以上調停を続けても無駄になるため、調停は不成立となります。遺産分割調停の場合、不成立になると、手続きが当然に「遺産分割審判」に移行します。わざわざ遺産分割審判の申立をする必要はありません。遺産分割審判になると、審判官(裁判官)が、ケースごとに適切と考えられる方法で、遺産分割方法を決めてしまいます。審判では、当事者の意向に沿った解決ができるとは限りません。
遺産分割調停は、遺産分割方法を自分たちで決定できるチャンスですから、有効に活用すべきです。
遺産分割調停にかかる期間
遺産分割調停というと、相当長い期間がかかると思われているかもしれません。実際には、どのくらいが標準的なのでしょうか?
最も多いのが、1年以内で全体の33%です。次いで6ヶ月以内の24%、3番目が2年以内の22%となっています。1年以上かかっているケースも30%ありますし、うち2年を超えるケースも8%あるので、やはり遺産分割調停にはそれなりの期間がかかると考えるべきでしょう(平成27年度司法統計)。
遺産分割調停を有利に進めるポイント
遺産分割調停を有利に進めるには、以下のような点に気をつけましょう。
言うべきことを主張する
まずは、言うべきことはしっかりと主張することです。自分の権利がある部分については、遠慮する必要はありません。遠慮していると、調停委員からどんどん譲るように迫られてしまい、本来もらえるものももらえなくなってしまうおそれがあります。
無理な主張をしない
反面、無理な主張をすると、大変印象が悪いです。自分に権利もないことを要求したり、本来の権利以上の要求に固執したりしていても、そのような要求は通らない上、争いがどんどんこじれてしまいます。主張を行うときには、法律的に認められている権利の範囲内で、適切な主張を行うことが大切です。
メモや資料を用意する
調停で、何らかの要求を行うとき、資料があると説得的になることが多いです。資料は、審判時にも役立ちます。たとえば、他の相続人に特別受益があると主張するなら、被相続人からその相続人が贈与を受けたことを疑わせる資料があると説得的です。不動産の評価や相場の賃料が問題になっているなら、関連する査定書などの資料を集めましょう。
また、その場で言いたいことを整理してすべて伝えることが難しい場合には、事前にメモを作ってまとめて持参しましょう。当日、相手が言っていたことや行われたやりとりの内容についても、メモに残しておくと、次回の話合いまでの対策に役立てることができます。
調停委員を味方につける
調停を有利に進めるためには、調停委員を味方につけることが重要です。調停委員も人間ですから、どうしても一方に肩入れすることが多いです。肩入れしてもらうと、相手を強く説得してもらうことができるなど、いろいろと有利になります。
調停委員を味方につけるためには、マナーを守り、節度をもった主張をすることなども重要ですが、弁護士に依頼をして、的確な対応をしてもらうことが非常に効果的です。
当事務所、弁護士法人YMPは、遺産分割調停の実績が非常に高く、多くのクライアント様にご満足いただいています。親身な対応を心がけておりますので、調停を有利に進めて希望通りに遺産分割を行いたい方は、是非とも一度、ご相談ください。