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借金を相続したくないとき、相続放棄か限定承認どっちを選ぶ?

  • 相続問題

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親などが亡くなったとき、借金やその他の負債が残されていることがあります。この場合、放っておくと相続人が返済や支払いをしなければなりません。

借金を相続しない方法としては、相続放棄と限定承認がありますが、このどちらにメリットが大きいのでしょうか?

今回は、借金などの債務の相続と、その場合の対処方法としての相続放棄と限定承認について、弁護士法人YMPの弁護士が解説します。

借金その他の債務や契約上の地位も、相続の対象になる

被相続人が借金を残したら、その借金も相続の対象になります。一般的に、遺産相続というと不動産や預貯金、現金のような資産を思い浮かべることが多いですが、借金や未払金などの負債も、相続の対象になるからです。

借金以外にも、未払家賃や未払の買掛金などの各種の負債も相続の対象となります。被相続人が交通事故を起こして被害者に賠償金を支払っていない場合には、賠償金支払い義務も相続されます。

さらに、債務だけではなく、契約上の地位も相続対象となります。たとえば、父親が賃貸住宅に居住していたときに相続が発生すると、相続人は賃借人としての地位を相続するので、賃貸借契約を解約するまで、賃料を支払っていかなければなりません。

相続人が複数いるときの借金の帰属

借金を相続するとき、相続人が複数いたら、どのように相続されるのでしょうか?

この場合、借金は、相続人の法定相続分に応じて、分割して帰属することになります。たとえば、妻と2人の子どもが相続人になっている場合には、妻が2分の1、子どもがそれぞれ4分の1ずつの借金を相続します。

借金の相続割合は、遺産分割協議によって変更することができません。債権者は、法定相続人に対して法定相続分に従って返済請求できます。ただし、当事者間で、最終的に誰が負担すべきかを決めることは可能です。たとえば、上記のケースにおいて、妻が全部の借金を負担すると決めておけば、子どもが支払をした場合に妻が子どもにその分を支払って、内部的に解決することとなります(債権者に対抗することができないということです)。

借金を支払えないとどうなるのか?

相続人が借金やその他の債務を相続した場合、相続された債務は、相続人自身が抱える負債となります。そこで、債権者は、相続人に対して直接請求することができます。遺産の中から支払いができない場合、相続人は自分の財産から支払をしなければなりません。自分の財産からも支払いができないなら、債権者は相続人に対して、債務の支払いを求めて裁判をすることができますし、判決で支払い命令が出たら、債権者は、相続人の財産を差し押さえて回収することも可能です。差押えの対象になるのは、相続人名義の預貯金や生命保険、不動産などのすべての財産や、給料、賞与、退職金などです。

差押えが始まると、相続人はまともな生活ができなくなるので、自己破産などの債務整理によって解決するしかなくなります。

相続放棄や限定承認で借金の相続を回避できる

以上のように、借金を相続すると、相続人には大きな負担がかかります。支払いを避ける方法としては、相続放棄と限定承認の2種類があります。

相続放棄とは、プラスの資産もマイナスの負債も、一切の相続をしないことです。

限定承認とは、遺産の内容を差引きして、プラスの部分が多ければその分だけを相続しますが、マイナスの負債が大きければ相続をしないことです。

どちらの方法によっても、借金をしないことは可能です。ただし、その要件や結果には大きな違いがあるので、ケースによって使い分けることが必要です。

相続放棄と限定承認の違い

以下では、相続放棄と限定承認の違いを説明していきます。

プラスの資産を相続できるかどうか

相続放棄と限定承認の大きな違いは、プラスの資産を相続する余地があるかどうかです。

相続放棄の場合には、マイナスの負債だけではなく、プラスの資産の一切も相続しません。そこで、借金よりも大きな資産が残されている場合に相続放棄をすると、損になってしまうおそれがあります。

これに対し、限定承認では、遺産を差し引きしてプラスの方が大きければ、プラスの部分を相続することができます。そこで、多くの資産が残されている場合には、限定承認を選択するメリットが大きくなります。

一人で手続きできるかどうか

相続放棄と限定承認には、手続きの方法にも違いがあります。どちらも家庭裁判所で申述という手続きをとらないといけないのですが、相続放棄の場合であれば、一人で申述することもできます。他の相続人の対応に影響されることはありません。

これに対し、限定承認の場合には、相続人が全員で限定承認の申述をしなければなりません。共同相続人のうち一人が手続きに協力しない場合や、先に誰か1人が単純承認してしまった場合には、もはや限定承認することはできなくなってしまいます。

手続きにかかる期間や手間

相続放棄と限定承認には、手続きにかかる期間や手間も異なります。相続放棄の場合には、自分一人で相続放棄の申述をしたら、1ヶ月もしない間に家庭裁判所が相続放棄を受理して、受理書を送ってくれます。それで、完全に借金を相続する可能性はなくなります。

これに対し、限定承認の場合には、相続人全員で限定承認の申述を行った後、「相続財産管理人」が選任されます。そして、相続財産管理人が債権者や受遺者を探し、必要な支払いをして相続財産を清算し、すべての手続きが終了してなおあまりがある場合に、ようやくあまった財産を相続人に返還してくれます。ここまでの手続きが半年以上はかかります。しかも、相続人が複数いる場合には、受けとった財産を遺産分割協議によって分割しなければなりません。

このように、限定承認をした場合、遺産問題を解決するまでに非常に長い時間がかかりますし、手間や労力もかかります。

税金の違い

相続放棄と限定承認では、税金の取り扱いも異なります。

相続放棄をすると、相続人ではなかったことになるので、当然相続税その他の税金の支払いは不要です。

これに対し、限定承認の場合、相続した分に対しては相続税がかかります。また、限定承認で不動産を相続した場合、相続時の時価により、相続不動産の譲渡があったとみなされてしまいます。そこで、みなし譲渡所得税という税金が課税されます。このような課税は、単純承認でも発生しないことなので、限定承認特有の大きなデメリットと言えます。

相続放棄すべき場合

以上を前提に、相続放棄すべき場合をまとめると、以下のようなケースです。

  • 借金以外にめぼしいプラスの資産がない
  • 明らかに債務超過である
  • 相続に関心がない
  • 遺産分割協議にかかわりたくない
  • 他の相続人と連絡がとれない
  • 他の相続人が協力してくれない
  • 他の相続人が単純承認してしまった
  • 早く相続トラブルを終わらせたい

限定承認すべき場合

限定承認を選択すべき場合は、以下のようなケースです。

  • 遺産の内容が不明で、調べてみないとプラスが多いのかマイナスが多いのかがわからない
  • 他の相続人と協力できる
  • まだ、誰も単純承認していない
  • 明らかな債務超過ではない
  • 相続財産に不動産がない

相続放棄・限定承認の期限

借金を相続しないためには、相続放棄や限定承認をすべきですが、これらの手続きには期限があるので、注意が必要です。具体的には「自分のために相続があったことを知ってから3ヶ月」以内に、家庭裁判所において申述の手続きをしなければなりません(民法915条1項)。この期間のことを、熟慮期間と言います。熟慮期間については、基本的に、相続開始があったことを知ってから3ヶ月となります。ただし、被相続人に遺産がまったくないと信じていて、そう信じたことにやむを得ない事由がある場合には、例外的に熟慮期間が進行しません。

また、熟慮期間中にどうしても態度を決められない事情がある場合には、熟慮期間延長の申立をすることにより、熟慮期間を延ばしてもらうことも可能です。ただし、延長申立をしても必ずしも認められるとは限らないので、態度を早く決めることが大切です。

借金を相続してお困りなら、弁護士法人YMPにご相談下さい!

以上のように、借金を相続しない方法としては、相続放棄と限定承認があり、どちらも一長一短です。適切な方法を選択するためには、専門家のアドバイスを受けることが重要です。

弁護士法人YMPは、相続問題を非常に得意とする専門事務所で、相続放棄や限定承認についても非常に高い実績を誇ります。親身な対応を心がけておりますので、相続した借金のことでお悩みの場合には、是非ともお早めにご相談下さい。