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民法改正によって、不動産契約はどのように変わるのか?

  • 顧問弁護士

公開日:

平成29年5月、現行民法が改正されることが決まり、近日中に改正民法が施行される予定となっています。

民法は、企業の普段の取引に関わる重要な法律です。特に、不動産取引を行うときには、民法改正によって大きな影響を受けることになります。

そこで今回は、民法改正によって、不動産契約がどのように変化するのか、不動産に詳しい弁護士が解説します。

不動産取引には、2種類がある

不動産取引には、売買契約と賃貸借契約があります。民法改正により、このどちらにも変更が加えられています。以下では、不動産売買と不動産賃貸に分けて、改正民法による影響を確認していきましょう。

不動産売買と改正民法

まずは、売買契約において、どのような変更点があるのか、みてみましょう。

瑕疵担保責任から契約不適合責任へ

これまでの民法において、不動産に「瑕疵」があるときには「瑕疵担保責任」が成立するものと規定されていました。瑕疵とは、傷や不具合のことです。たとえば、雨漏りがするとか、シロアリが巣くっているなどが典型的な瑕疵です。現行民法では、瑕疵がある場合、買主は売主に対し、瑕疵担保責任として、契約解除や損害賠償請求ができます。

改正民法では、この「瑕疵担保責任」が廃止されて「契約不適合責任」が新たに規定されます。瑕疵担保責任と契約不適合責任は、法的な性質や要件、効果などが相当異なってくるので、違いを押さえておく必要があります。

隠れた瑕疵は不要

瑕疵担保責任と契約不適合責任の大きな違いの1つ目は、「隠れた」瑕疵が不要だということです。瑕疵担保責任を追及するためには、瑕疵が「隠れている」必要があったので、買主が瑕疵の存在を知らなかった場合にしか請求が認められませんでした。

これに対し、契約不適合責任の場合、買主が瑕疵の存在を知っていたとしても、責任追及をすることができます。

このことは、不動産売買契約書における、瑕疵担保責任の免除規定に影響します。従来は、瑕疵の存在を指摘するだけでよかったのですが、改正民法施行後は、買主が瑕疵を知っていても責任追及できるので、瑕疵の存在及び「契約不適合責任を追及しないこと」を明記する必要があります。

引き渡し時までに発生した事情を考慮

瑕疵担保責任と契約不適合責任では、いつまでに発生した事情を考慮するかという点も異なります。

瑕疵担保責任では、「契約時までに存在した事情」を基準としますが、契約不適合責任では「引き渡しまでに発生した事情」を基準として、責任発生の有無を決定します。

債務者の過失が必要

瑕疵担保責任は無過失責任ですので、債務者(売主)に過失がなくても、成立します。これに対し、契約不適合責任は、通常の債務不履行の1種と考えられているので、債務者に過失がない限り、発生しません。

損害賠償の範囲

瑕疵担保責任と契約不適合責任とでは、損害賠償の範囲も異なります。瑕疵担保責任は、「契約が有効であると信じたこと」によって発生した「信頼利益」の部分までしか損害賠償ができません。これに対し、契約不適合責任は通常の債務不履行責任の1種ですので、「契約通りに履行された場合に得られたはずの利益」である「履行利益」の部分にまで損害賠償の範囲が広がります。

買主は修繕請求、瑕疵修補請求ができる

従来の瑕疵担保責任では、買主が売主に請求できるのは、信頼利益の損害賠償請求と、契約目的が達成できない場合の契約解除のみでした。

これに対し、契約不適合責任では、対象物件の修繕請求をすることができます。ただし、修繕が可能なケースに限られます。

代金減殺請求ができる

従来の瑕疵担保請求では、数量を指示して売買する数量指示売買のケースでしか、代金減殺請求が認められていませんでした。

これに対し、契約不適合責任では、代金減殺請求権が認められています。

契約不適合責任追及期間の延長

契約不適合責任では、一定のケースにおいて、責任追及期間が延長されています。

瑕疵担保責任では、買主が隠れた瑕疵の存在を知ってから1年以内に、瑕疵担保責任にもとづいた、具体的な請求(解除や損害賠償請求)をしなければなりませんでした。

これに対し、契約不適合責任では「売主が瑕疵を知っていた場合や、瑕疵を知らないことに重大な過失があった場合」には、責任期間が5年に延長されます。

不特定物にも適用される

不動産売買ではあまり問題にならない点ですが、契約不適合責任は、不特定物にも適用されます。つまり、従来の瑕疵担保責任は、代替性のない特定物にしか認められていなかったのですが、契約不適合責任は、大量生産の既製品などにも適用されうる可能性があるということです。

不動産賃貸と改正民法

次に、不動産賃貸借契約における、民法の改正点を確認していきましょう。

借主の修繕権

不動産賃貸借契約で重要な改正点の1つ目は、借主に修繕権が認められたことです。すなわち、従来の賃貸借契約においては、貸主に修繕義務があり、借主が勝手に物件に手を入れることが認められていなかったので、賃貸物件に不具合が発生したときに、賃借人は賃貸人の対応を待つしかありませんでした。

これに対し、改正民法では、以下のような場合において、賃借人の側に修繕権が認められます。

  • 相当な期間を定めても、賃貸人が修繕しないとき
  • 急迫の事情があるとき

旧賃貸人に賃貸人の地位を残せる

賃貸借契約が締結されているときに、対象物件の所有権を移転すると、賃貸人の地位は、旧所有者から新所有者に当然に移転すると考えられています。従来の民法ではこの点が明記されていませんでしたが、改正民法では、このことが明記されています。

それだけではなく、改正民法では、物件の所有権を移転させても、賃貸人としての地位を旧所有者に残すことができると定めています。このとき、賃借人による個別の承諾は不要です。従来、賃貸人たる地位を旧所有者に残すためには賃借人による承諾が必要でしたが、今後はそれが不要となるので、取引の円滑化を図ることができます。

敷金返還と原状回復責任の明記

現在でも、不動産賃貸借契約においては、貸主には敷金返還義務があり、借主には原状回復義務があると考えられています。改正民法では、これらの義務が明文化されました。

敷金については定義が明確化され、「いかなる名義を持ってするかを問わず、賃料債務その他賃貸借契約にもとづいて発生する賃借人の賃貸人に対する金銭債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」と規定されています。また、敷金返還のタイミングは「賃貸借契約が終了し、対象物件の引き渡しを受けたとき」と明記されました。

原状回復義務についても明文化されるとともに、その範囲としては、通常の損耗や経年劣化を含まないことが定められました。ただし、通常損耗を含むとする特約は、改正民法施行号においても有効です。

連帯保証契約には極度額の設定が必要

賃貸借契約を締結するときには、連帯保証人をつけることが非常に多いです。従来は、連帯保証人の保証に限度額(極度額)をもうける必要はありませんでしたが、改正民法では、極度額をもうけるべきとされています。そこで、今後賃貸借契約を締結し、連帯保証人をつけるためには、必ず極度額を設定し、契約書内にも明記しておくことが必要となります。

不動産取引は、弁護士法人YMPにお任せ下さい

不動産取引を行うときには、法律の専門知識が必須です。特に、法改正が行われたときには、従来のやり方を変えなければならないので、自社で対応すると間違いが起こりやすいです。

弁護士法人YMPは、不動産取引に非常に長けた弁護士事務所です。対応に迷われたときには、是非ともお気軽にご相談下さい。