債権回収を確実にするための仮差押・仮処分
- 債権回収
公開日:
債権回収をするためには、債務者に対し、裁判を起こす必要があるケースが多いです。ただ、裁判には長い時間がかかるので、裁判の途中で財産を隠されたり、賃貸物件に占有者をおかれたりすることもあります。そのようなことのないように、事前に仮差押や仮処分をしておくことが重要です。
以下では、債権回収を確実に成功させるために重要な仮差押や仮処分について、弁護士法人YMPの弁護士が解説します。
このページの目次
仮差押と仮処分は、「民事保全」
仮差押と仮処分は、ともに「民事保全」という手続きの1種です。民事保全とは、債権者による債務者に対する後の強制執行を可能とするための手続きです。仮差押と仮処分については、区別がついていない方も多いかも知れませんが、上手に使い分けると、非常に効果的に債権回収することができます。
以下で、それぞれについて、詳しく確認しましょう。
仮差押とは
仮差押とは
仮差押とは、判決の確定前に、債務者の財産や債権を仮に差し押さえることです。差押えとは、債務者の財産や債権の処分や移転を禁止することですから、仮差押は「仮」に相手の資産や債権の処分や移転を禁じることと言えます。
通常、債務者が売掛金や借金その他の負債の支払をしないとき、債権者は、債務者に対し、売掛金請求訴訟や貸金返還訴訟などの訴訟を起こさなければなりません。訴訟により、裁判所により判決を下してもらうことができたら、判決書をもって相手の資産や債権を差し押さえることができます。
ただ、訴訟をすると、判決が出るまでの間、半年程度かかってしまうことも多いです。その間、資産や債権は債務者のものですから、債務者が自由に処分することができます。すると、訴訟をしているうちに、相手が不動産の名義を換えてしまったり、預貯金を解約して使ってしまったりして、財産隠し・費消をしてしまうおそれが高いです。そうすると、せっかく判決を得て強制執行できる状態になっても、意味がありません。
そこで、判決確定前に「仮に」相手の資産や債権などの価値あるものを差し押さえておく方法が、仮差押です。仮差押をすると、債務者はその財産を勝手に処分したり使ったりすることができません。たとえば、不動産を仮差押すると、不動産の譲渡や抵当権設定ができなくなるので、不動産をそのまま維持することができます。そして、判決が出たら、引き続いてその不動産を競売にかけて、債権回収することができます。
仮差押の目的は、金銭債権
また、仮差押によって保全されるのは「金銭債権」です。お金を払ってもらうための裁判を起こすのであれば、事前に仮差押をしておく必要があります。
仮処分とは
仮処分は、金銭以外の債権を保全するための処分です。典型的な仮処分のケースは、賃貸借契約において、建物明け渡しを請求する場合です。賃貸借契約を締結していて、賃借人が家賃を滞納すると、賃貸人は建物明け渡し訴訟を起こして賃借人を強制退去させることができます。ただ、裁判の途中で賃借人が別の第三者に建物を転貸してしまうと、判決の効果はその第三者には及ばないので、債務者に対して明け渡しを求める判決が出ても、その判決をもって転借人に建物明け渡しを求めることができません。
そのようなことを防止するために「占有移転禁止の仮処分」という方法を利用します。占有移転禁止の仮処分とは、訴訟継続中、債務者が勝手に建物の占有を移転することが禁止されるものです。事前に占有移転禁止の仮処分を行っておくと、債務者が訴訟継続中に第三者に占有を移転することはできません。判決が出たら、債務者に対し、建物明け渡しの強制執行を行うことが可能となります。
以上のように、仮差押も仮処分も、ともに債権者の権利を実現するために非常に重要な手続きです。訴訟提起前、必ず忘れずに行っておくことが重要です。
仮差押の利用方法
仮差押の対象になるのは、不動産と債権、動産の3種類です。
不動産 | 土地、建物のことです。 |
---|---|
債権 | 預貯金や生命保険の解約返戻金、売掛金債権、敷金返還請求権、給料などです。 |
動産 | 骨董品や絵画、現金、宝石、貴金属などです。 |
仮差押の申立方法と手続きの流れ
仮差押の要件
仮差押を行うときには、裁判所に対する申立が必要です。仮差押が認められるためには、以下の2つの要件が必要です。
- 被保全権利の存在
- 保全の必要性
被保全権利とは、相手に請求できる売掛金や貸付金などの債権のことです。保全の必要性とは、放っておくと相手が財産を処分してしまうおそれが高いことなどです。そこで、これらの要件をまとめた「仮差押命令申立書」を作成し、裁判所に提出する必要があります。このとき、被保全権利や保全の必要性についての資料を一緒に提出します。
審尋と仮差押の決定
申立をすると、裁判所で審尋が行われます。審尋では、裁判官が疑問に感じていることや不足している資料などについての指摘を受けます。補正をした結果、仮差押が相当と判断されると、仮差押命令が出ます。
保証金
また、仮差押を認めてもらうためには、保証金を納める必要があります。保証金とは、相手が損害を被ったときに備えて納めるものであり、問題が発生しなかった場合には、後に返してもらうことができます。
仮差押の効果
仮差押の決定が出ると、債務者や第三債務者(債権の場合)に、債権者に仮差押の通知が届き、それ以後、財産処分が認められなくなります。不動産の場合には、「仮差押」の登記が行われるので、取引ができなくなります。
仮処分を行う方法
仮処分を行う方法も、仮差押とほとんど同じです。被保全権利と保全の必要性を明らかにして、申立書を作成し、資料をつけて提出をします。ただ、仮処分の場合、単純な金銭債権ではないので、被保全権利を何にすべきか、慎重に検討すべきケースがあります。
仮処分のケースでも、申立後、裁判所で審尋が開かれて、補正を行った上で裁判所が仮処分命令を下します。
仮差押・仮処分を弁護士に依頼するメリット
仮差押や仮処分を弁護士に依頼すると、以下のようなメリットがあります。
スピーディに手続きができる
弁護士に依頼する一番のメリットは、スピーディに仮差押や仮処分をできることです。これらの保全手続きは、債務者が財産隠しをすることなどを防ぐため、先んじて行うものですから、とにかく早く決定を出してもらうことが大切です。
債権者ご本人が対応すると、資料を過不足なく集めることなどができないので、裁判所からいろいろと指示を出されて一向に決定が出ない、ということになりかねません。その間に債務者に財産隠しをされてしまうでしょう。
弁護士であれば、当初から過不足なく必要な資料を集めてわかりやすく申立書を作成し、裁判所における審尋でも適切に対応できるので、早急に仮差押、仮処分の手続きを出してもらうことができます。
手間が省ける
仮差押、仮処分の手続きは非常に手間がかかるものです。書類の作成や裁判所での審尋などに対応しなければならないので、慣れない方には大変な負担となります。弁護士に依頼すると、こうした手続きはすべて弁護士が代行するので、依頼者は何もする必要がありません。普段通りの会社経営に専念していただくことができます。
仮差押・仮処分を利用した債権回収は、弁護士法人YMPまでお任せ下さい
債権回収を効果的にすすめるためには、仮差押と仮処分の手続きを利用することが必須です。ただ、これらの手続きは裁判所における書面審理であり、裁判手続きに慣れていない方には非常に困難ですから、スムーズに進めて成功させるには、弁護士によるサポートが重要です。
弁護士法人YMPでは、債権回収のご依頼をお受けしたとき、必要な場合にはすぐに仮差押・仮処分を行って権利を保全します。未回収の債権があってお悩みの場合には、是非ともお気軽にご相談下さい。