取引先との関係を悪化させずに債権回収する方法
- 債権回収
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取引先が売掛金を支払わない場合、早期に回収する必要があります。ただ、取引先が破綻したのでもない限り、支払いさえしてもらえたら、その後も取引を継続したいことがあるでしょう。関係を継続させたいのであれば、債権回収の際に配慮が必要となってきます。
今回は、取引先との関係を悪化させずに債権回収する方法を、弁護士法人YMPの弁護士が解説します。
このページの目次
強硬な手段をとると、取引先との関係を維持できなくなる
取引先が売掛金を支払わないのであれば、当然、債権回収が必要です。ただ、やみくもに債権回収をすると、取引先との関係が壊れてしまうことがあります。たとえば、内容証明郵便を送付しただけでも「喧嘩を売られている」と受け止められることあります。訴訟を起こすと、お互いが完全に対立する関係となるため、相手の落ち度を主張し合うことになり、関係の悪化は避けられません。
このように、債権回収の際に強硬な手段をとりすぎると、取引先との関係を維持できなくなるので、将来も引き続いて取引したい場合には、相手の気分を害しすぎないように配慮することも必要となってきます。
債権回収で、取引先との関係が壊れるパターン
債権回収を行うとき、取引先との関係が悪化するパターンにはどのようなものがあるのでしょうか?
電話で言い合いになってしまう
1つ目は、電話で督促をするときの失敗です。入金が滞ったと、まずは電話で督促をすることが多いです。ところが、このとき、相手を責めすぎたり、支払いをわざとしなかったのだと決めつけたりすると、相手が気分を害することがあります。相手にしても、たまたま入金漏れがあっただけというケースもありますし、たとえ資金繰りの関係で入金が遅れたとしても、それほどきつく言われる覚えはない、と考えることもあるからです。
相手の事務所に行って、喧嘩になる
債権回収の貯めに、相手の事務所や営業所に直接出向くケースもあります。ここでも、当初から相手を責めて強硬に支払をするように求めると、相手が気分を害して喧嘩になってしまうことがあります。こうしたトラブルになると、相手は任意に払おうという気持ちがなくなるので、かえって支払を受けにくくなってしまいます。
いきなり内容証明郵便で請求書を送付する
請求書を送るときには、内容証明郵便を利用することが多いです。内容証明郵便自体に法的な効力はありませんが、一般的に、内容証明郵便を送られてくると、非常にプレッシャーを感じる人が多いです。
そして、「内容証明郵便が送られてくる」ということは、「喧嘩を売られている」ものと考える人もいます。相手との関係を維持したいのであれば、支払いをしないからといって、いきなり内容証明郵便を送るのは得策ではありません。
支払督促を申し立てる
支払督促とは、簡易裁判所に申立をして仮執行宣言を出してもらい、相手の資産や債権を取り立てるための手続きです。相手が2週間以内に異議申立をしない限り、債権者は債務者に強制執行ができます。
ただ、話合いのステップを飛ばしていきなり支払督促を申し立てると、相手は喧嘩を売られていると捉えることがあります。そうなると、異議申立をされて通常訴訟となり、延々と争いが繰り広げられることもあります。
訴訟を提起する
訴訟をすると、関係の維持は困難です。訴訟では、互いが有利な判決を得るために自分にとって有利な主張しかしません。相手の言い分には照っていて的に反論をして、つぶしておかないと、勝つことができないのです。
そこで、訴訟をするのは、相手との関係が壊れても良いときに限るべきです。話合いのステップを飛ばしていきなり訴訟をするのは控えましょう。
取引先との関係を壊さずに債権回収する方法
以下では、取引先との鐘鋳を壊さずに債権回収する方法をご紹介します。
まずは、電話で状況確認をする
取引先からの入金が遅れたら、まずは電話をかけて、状況を確認しましょう。相手は、単に入金を忘れているだけのこともあるためです。話をするときも、あまり強く責めすぎない方が良いです。相手と話合いをして、支払える条件を設定し、合意によって支払いをしてもらうのが適切な方法です。
ただし、分割払いになる場合などには、支払に関する合意書を公正証書にしておきましょう。
督促状によって債権回収する方法
相手に電話をしても支払いが行われないときや、電話がつながらない場合などには、書面で督促状を送ります。このとき、いきなり内容証明郵便を送ると、相手が気分を害することがあります。ケースによりますが、まずは普通の郵便を使って状況を尋ねてみるのも1つの方法です。
ただし、普通郵便で督促しても応答がない場合には、内容証明郵便を使ってある程度強硬に督促をすることも必要になります。
相手の事務所や営業所を訪ねる方法
相手が支払に応じないなら、相手の事務所や営業所を訪ねていくことも必要です。そのとき、いきなり喧嘩腰で臨むのではなく、相手の言い分にもある程度耳を傾けましょう。その上で、どのような条件であれば支払えるのかを明らかにして、支払える範囲で支払う約束をしましょう。合意書は、公正証書の形にしておくことをお勧めします。
調停をする
裁判外の請求手続を使っても相手が支払に応じない場合には、裁判所での手続きを利用するしかありません。
相手との関係を壊したくないならば、まずは調停をしてみることをお勧めします。調停は、相手との話し合いの手続きなので、関係が悪化しにくいためです。調停では、調停委員が間に入って債権者と債務者の仲介をしてくれます。お互いに顔を合わせると、どうしても強い口調になってしまう場合には、調停が有効な解決方法となります。
状況により、弁護士に内容証明郵便の送付を依頼する
債権回収を行うとき、弁護士に対応を依頼することも多いですが、弁護士に依頼すると、相手との関係が壊れてしまうと思われていることもあります。
確かに、弁護士から通知書が送られてくると、喧嘩を売られたと受け止める人や企業が多いことは事実です。ただ、弁護士が早期に介入して内容証明郵便を送り、相手が支払いに応じたら、その後の泥沼の裁判や強制執行を避けることができます。
弁護士がマナーをもって礼儀正しく相手と話をすれば、相手もさほど気分を害しないものです。そこで、相手が任意の支払に応じないケースでは、状況に応じて弁護士に債権回収を依頼すると良いでしょう。
強硬な債権回収方法に切り替えるべきケース
以上は取引先との関係を維持することを前提とした債権回収方法ですが、こうした穏便な手法をとっていては、支払を受けられずに自社が損害を被ることがあります。以下では、より強硬な債権回収方法に切り替えるべきケースをご紹介します。
取引先が支払に応じない場合
話合いや調停などの穏便な方法では相手がまったく支払に応じない場合には、仮処分→訴訟や差押え等の厳格な手段を用いて強制的に債権回収を実現すべきです。
取引先が破綻しそうな場合
取引先が破綻してしまったら、(ほとんど)まったく支払を受けられなくなってしまいます。また、破綻寸前になると、他の債権者もどんどん請求をかけてきて、債務者にめぼしい資産が残りません。破綻前に、早期に確実に債権回収してしまうことが重要です。
そこで、相手が破綻しそうなら、穏便な手段をとる必要はないので、早期に強硬な方法で債権回収してしまいましょう。
取引先への請求は、弁護士法人YMPまでお任せ下さい
取引先からの入金が途絶えたときには、状況に応じた適切な対処が必要です。関係を壊したくないという希望は理解しますが、そのような悠長なことを言っていられないケースもあります。
弁護士にご相談を頂けましたら、状況に応じた最善の方法をご提案いたします。債権回収を成功させるため、お気軽に弁護士法人YMPまでご相談下さい。