売掛金回収の流れを徹底解説!
- 債権回収
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売掛金がある場合には、早めに回収手続きに入るべきですが、そのためには、正しい売掛金回収の流れを把握しておくことが大切です。
今回は、売掛金回収の流れについて、債権回収を得意とする弁護士法人YMPの弁護士が解説します。
売掛金回収の基本的な流れ
はじめに売掛金回収 全体の流れを確認していきましょう。
売掛金回収を行う際の流れをおおまかにまとめると、以下のようになります。
- 入金の確認と督促
- 内容証明郵便で請求する
- 交渉
- 公正証書を作成する
- 即決和解
- 調停
- 支払督促
- 少額訴訟
- 通常訴訟
- 仮差押え・仮処分
- 強制執行(差押え)
おおまかに分けると、1~6までが相手との間での交渉・話し合いによる売掛金回収、7以降は交渉・話し合いで折り合いがつかず、法的に売掛金回収を進める際の手続きです。
以下に、1項目ずつ解説していきます。
売掛金回収の流れ(1)交渉・話し合いによる売掛金回収
入金の確認と督促
相手からの売掛金の入金が遅れたら、まずは電話やメールなどで、入金が行われていないことを知らせて、状況を確認しましょう。相手の入金漏れなら、電話一本で解決できる可能性もあります。また、何らかの事情で遅れているなら、いつまでに支払いができるのか、明らかにさせましょう。そして、期日を決めて入金を受けるようにします。
内容証明郵便で請求する
電話などで督促をしても入金が行われない場合には、内容証明郵便を使って請求書を送りましょう。内容証明郵便とは、相手に送付したものと同じ内容の書面が、郵便局と差出人の手元に残る書類です。内容証明郵便で督促状を送ると、相手に請求したことを後から証明できます。
内容証明郵便で請求書を送るときには、未払の売掛金の種類や金額、その支払を請求すること、相当期間内に入金することを求めることを、書き入れましょう。また、支払いや返答が無い場合には、訴訟等の手続きを行う、ということも書き入れておくと良いでしょう。
内容証明郵便自体には、取り立てを行ったり、相手に返答を強制したりする効果はありません。ただ、内容証明郵便が届くとプレッシャーがかかるので、返答をしてきたり支払いに応じてきたりする債務者もいるので、債権回収の最初の一歩としては、非常に有効な方法です。
交渉
内容証明郵便を送ったら、相手との間で売掛金の支払いについての交渉を行います。決めるのは、金額と支払期限と支払い方法(一括か分割か)です。合意ができたら、その内容に従って支払いを受けることができます。支払時期が先になる場合や分割払いになる場合には、合意書を作成しましょう。
当事者同士で話合いをしても合意ができない場合には、弁護士に交渉を依頼することも可能です。弁護士が代理人になると、法的に有効な理論を組み立てて依頼者に有利な方法で話を進めていくことができますし、きちんとした内容の合意書を作成することができるので、安心できます。
公正証書を作成する
支払いが分割払いになる場合や、これまでの取引で契約書を作っていなかったので、これを機に契約書を作成することになった場合などには、公正証書を使って契約書を作成しておきましょう。公正証書とは、公務員である公証人が作成する1種の公文書です。売掛金支払いに関する契約書を公正証書にしておくと、相手が不払いになったときに、裁判をしなくてもいきなり相手の資産を差し押さえることができます。
公正証書を作ると、相手の方も「滞納したら差押をされるかもしれない」というプレッシャーを感じるので、滞納しにくくなります。
公正証書を作成したいときには、お近くの公証役場に申込みをして日程を調整し、定められた日時に債務者と一緒に公証役場に行く必要があります。
即決和解
売掛金の支払い方法について債務者と和解ができた場合には、裁判所で即決和解という方法を利用することができます。即決和解とは、当事者の和解内容を裁判所で和解調書にしてもらう方法です。和解調書には、公正証書などと同様に強制執行力があるので、相手が支払をしないときにいきなり資産を差し押さえることができます。公正証書は、金銭支払いを目的とする場合にしか使えませんが、即決和解なら、債務者の他の資産によって支払いを受ける場合にも利用できます。
即決和解を利用したいときには、事前に作った和解内容をつけて簡易裁判所に「訴えていき前の和解の申立」を行います。
調停
自分達で話合いをしても解決できない場合には、調停によって債権回収できることもあります。調停とは、簡易裁判所で、調停委員を介して話合いを行うことです。間に調停委員が入って調整してくれるので、自分達で直接話合いをするより、解決しやすいです。また、分割払いの約束もできますし、保証人をつけたりすることも可能なので、できるだけ確実に回収できるように、希望を述べると良いでしょう。
調停が成立すると調停調書が作成されますが、調停調書にも強制執行力があるので、相手が支払をしないときには、資産を差し押さえることが可能です。
売掛金回収の流れ(2)法的手続き・訴訟による売掛金回収
支払督促
話合いの手続きでは相手が支払をしないとき、支払督促という法的な手続を利用することも可能です。支払督促を申し立てると、相手が2週間以内に異議を申し立てないときに、相手の資産を差し押さえることができます。通常訴訟と違い、証拠も不要ですし、複雑な手続きもありませんので、弁護士に依頼しなくても利用しやすい手続きです。裁判所に支払う費用も訴訟の半額ですし、約2か月の短期間で解決することも可能です。ただし、債務者から異議を申し立てられると、手続きは通常の訴訟に移行します。
支払督促をするときには、簡易裁判所に申立をする必要があります。
少額訴訟
売掛金の金額が60万円以下の場合には少額訴訟を利用することもできます。少額訴訟では、手続きが非常に簡略化されていて、すべての証拠調べと判決が1日で終わります。手続きが簡単なので、弁護士に依頼しなくても利用しやすい方法です。
通常訴訟
請求金額が60万円を超える場合には、通常訴訟しか利用できません。60万以下でも、通常訴訟を選ぶことは可能です。訴訟は話合いの手続きではなく、裁判所が法的な判断を下す手続きです。裁判官に売掛金の支払い命令の判決を出してもらうためには、法的に適切な主張を行い、証拠を提出する必要があります。
提訴後、1ヶ月に1回くらいのペースで期日が開かれて、当事者の主張や立証内容を整理していきます。判決が出るまでには、半年くらいかかることが多いです。
また、裁判の途中で和解することもできます。和解とは、当事者同士が話し合って合意することにより、裁判を終わらせる手続きです。和解ができたら、その内容に従って相手から支払いを受けることができます。
訴訟を進めるときには、法的な知識と技術が必要です。当事者が自分で訴訟を進めるとスムーズに進まないことが多いので、弁護士に依頼することをお勧めします。
仮差押え・仮処分
訴訟をするときには、事前に仮差押や仮処分をしておきましょう。裁判をすると、半年程度はかかってしまいますが、その間に相手が資産を隠してしまう可能性があるからです。仮差押え、仮処分をしておけば、相手は自由に資産を売却、贈与したり担保設定したりすることができなくなるので効果的に将来の差押えに備えることができます。
また、相手の資産を仮差押えすると、相手はプレッシャーを感じたり営業上支障が発生したりするので、任意で支払に応じてくることもあります。
仮差押や仮処分をするときには、裁判官に被保全権利の存在や権利保全の必要性を疎明しなければならないので、債権者が自分で対応するとスムーズに進みにくいです。訴訟前の仮差押を行うときにも、弁護士に依頼しましょう。
強制執行(差押え)
公正証書、調停調書、和解調書、判決書などがあっても、相手が支払をしないことがあります。その場合には、相手の資産に強制執行(差押え)をしなければなりません。差押えの対象となる資産は、相手の預貯金や株券、不動産、車、貴金属などの動産、売掛金や賃料などの債権などです。
強制執行を行うときには、基本的に債権者側が資産を見つけなければなりません。適切な資産調査方法がわからない場合には、弁護士までご相談下さい。
売掛金回収を進めるなら、弁護士までご相談を!
売掛金を滞納されたら、早めに回収に取り組む必要があります。また、各種の手続きを進めるときには、弁護士が代行すると、スピーディに取り立てができて、有効です。
弁護士法人YMPでも、積極的に売掛金回収のサポートを行っています。確実に、スムーズに債権回収をされたい方は、是非とも一度、ご相談下さい。