自己破産の免責不許可事由と、正しく免責を受ける方法
- 債務整理
公開日:
自己破産をするときには、「免責」を受けることによって債務の支払い義務を無くしてもらうことができます。ところが、一定の事由があると、この免責を認めてもらうことができなくなります。そのことを、「免責不許可事由」と言います。
自己破産を成功させるためには、免責不許可事由はどのような場合に発生するのかに関する知識や、免責を不許可にならないための方法を押さえておくことが重要です。
以下では、自己破産の免責不許可事由と、正しく免責を受ける方法について、弁護士法人YMPの弁護士が解説します。
このページの目次
免責不許可事由とは
免責不許可事由とは、それに該当する場合、免責決定を受けられなくなる事情のことです。
個人が自己破産をするとき、目的としているのは「免責決定」です。免責決定とは、税金などの一部の債権をのぞき、すべての債務の支払い義務をなくす決定です。自己破産をすることで借金の支払い義務がなくなるのは、この免責決定の効果によります。
そこで、自己破産をしても免責決定を得られなければ借金がなくなることはありません。
ところが、免責不許可事由があると、この免責を受けられなくなるので破産者にとっては大変なことです。管財事件となってすべての財産がなくなっても、免責不許可事由があるために借金支払い義務だけが残った、ということも生じるおそれがあります。
免責不許可事由となるケース
免責不許可事由となるケースは、破産法252条1項各号に規定されています。
- 債権者を害する目的をもって、財産を隠したり、壊したり、処分したりした場合
たとえば、不動産を不利益な条件で譲渡したり、理由なく贈与したり、価値のあるものを物理的に壊したり、財産価値を減少させるために管理を怠ったりしたケースなどです。
- 破産手続きの開始を遅らせるために、著しく不利益な条件で債務を負担した場合
たとえば、ヤミ金などから違法な高金利で借入れをした場合などです。
- 破産手続きの開始を遅らせるために、クレジットカードの現金化などを行ったとき
クレジットカードで商品を購入して、すぐに低額な金額で売却して換金した場合などです。新幹線のチケットやブランド品を利用する場合なども該当しますし、クレジットカード現金化業者を利用した場合にも、この要件に該当します。
- 特定の債権者にのみ担保を設定したり、返済したりした場合
自己破産では、すべての債権者を平等に取り扱わないといけないという「債権者平等の原則」が適用されます。そこで、一部の債権者にのみ担保を設定したり支払をしたりすることは、偏頗弁済として禁止されます。こうした偏頗弁済がある場合にも、免責不許可事由となります。
- 浪費やギャンブルその他の射幸行為をした場合
浪費やギャンブルは、非常に有名な免責不許可事由です。買い物や旅行など「浪費」をしたり、パチンコやパチスロ、競馬や競艇などのギャンブルをしたりして、著しく財産を減少させたり借金を増やしたりしてしまった場合には、免責不許可事由となります。
その他の射幸行為とは、株取引や先物取引、FXなどのことです。こういった取引を利用して損失を出し、借金を増やしてしまった場合にも免責不許可事由となってしまいます。
- 破産申立て前1年の間に、支払い能力や支払い意思について虚偽を述べて(詐術を使って)借金をした場合
破産手続き前の1年間には、すでに借金の支払いが困難になっていたり、困難になりそうなことが容易に予想できたりするものです。このように、支払いができなくなることをわかっていながら、いかにも支払いが出来そうな顔をして(相手を騙して。このことを「詐術」と言います)借り入れを行うと、免責不許可事由に該当します。免責不許可事由に言う「詐術」は、支払い能力に関する詐術なので、一般的な意味の「詐欺」とは異なります。
- 業務に関する帳簿や資料を隠したり偽造・変造したりした場合
個人事業者や会社経営者などが、確定申告書や出納帳、決算書などの帳簿その他の書類、財産に関する資料を隠したり偽造したり書き換えたりすると、免責不許可事由に該当します。
- 虚偽の債権者一覧表を裁判所に提出した場合
偏頗弁済を行うためなどの目的で、一部の債権者だけを外して虚偽の債権者一覧表を裁判所に提出すると、免責不許可事由となります。
- 裁判所による調査で虚偽の説明をした場合
たとえば、破産審尋や免責審尋などにおいて、裁判所に虚偽の説明をしたり、説明を拒絶したりすると、免責不許可事由となります。
- 不正な方法で、破産管財人の業務を妨害した場合
暴行や脅迫、欺罔(騙すこと)などの不正な方法で、破産管財人や破産管財人代理、保全管理人や保全管理人代理の業務を妨害すると、免責不許可事由となります。
- 自己破産・免責申立前の過去7年以内に免責決定を受けて確定している場合
- 自己破産・免責申し立ての過去7年以内に、給与所得者等再生によって再生計画認可決定を受けて、支払いを完了している場合
- 自己破産・免責申し立て前の過去7年以内に、個人再生でハードシップ免責を受けている場合
過去に自己破産免責を受けている場合、過去に給与所得者等再生(個人再生の1種)で再生計画認可決定を受けて、支払いを終えている場合、個人再生で「ハードシップ免責」とい方法で免責を受けた場合、その後7年以内に自己破産をしても、免責不許可事由となって認めてもらうことができません。給与所得者等再生の場合、その後に完済していることが免責不許可事由となるための条件であり、完済できなかった場合には、7年以内であっても免責を受けることができます。
- 債権者集会などにおいて、必要な説明を拒絶した場合
- 裁判所に対し、財産資料等を提出しなかった場合
- 裁判所や破産管財人による調査に協力しなかった場合
このように、裁判所や破産管財人による調査に協力しなかった場合にも、免責不許可事由となります。
免責不許可事由がある場合の対処方法
免責不許可事由に該当する場合、必ずしも免責を受けられないということではありません。多くの場合には、「裁量免責」という方法で、免責を受けることができます。
裁量免責とは、免責不許可事由があっても、裁判所の裁量により免責を認めることです。実際には、パチンコや浪費など、多少の免責不許可事由があっても、1回目の自己破産であればほとんどのケースで裁量免責を受けることができます。免責不許可事由があるからといって、自己破産を諦める必要はありません。免責不許可事由があるなら、まずは裁量免責を目指しましょう。
また、免責不許可事由に該当する場合、財産がなくても破産管財人が選任されて管財事件となり、免責に関する調査が行われることがあります。そういったケースでは、誠実に破産管財人による調査に協力して、これまでの生活態度を反省していることを理解してもらうことができれば、裁判所によって裁量免責を受けられます。
免責不許可事由に該当しないことも重要
免責不許可事由には、破産者が守るべき当然のルールの違反行為もあります。たとえば、財産隠しや、偏頗弁済、裁判所や管財人による調査に協力しないことなどです。特に、「バレないだろう」と考えて、悪質な財産隠しや偏頗弁済をすると、免責を認めてもらえなくなるおそれが高まります。
自己破産をする以上、財産がなくなることや、債権者や保証人に迷惑がかかることは、ある程度やむを得ないものとして受け入れる必要があります。正直に弁護士や管財人、裁判所に話をして、免責を受けられるように誠実に手続きを進めましょう。
時間の経過によって免責が認められるケースもある
過去に自己破産や個人再生をした経緯がある場合には、7年が経過しないと免責が認められないケースがあります。このようなときには、7年が経過すると免責を認めてもらえるので、時間の経過を待ちましょう。
どうしても待てない場合には、他の債務整理方法を利用することなども検討できます。ケースによって有効な対応方法が異なるので、弁護士に相談することをお勧めします。
以上のように、自己破産で免責不許可事由があると、免責が受けられなくなるので非常に大きな不利益がありますが、実際には免責不許可事由によって免責が認められないことは、非常に少ないです。自分に免責不許可事由があるのではないかが心配なケースでも、対応方法が見つかるものです。
免責不許可事由が心配なら、弁護士法人YMPにお任せ下さい
弁護士法人YMPでは、自己破産の取扱いに精通しており、これまで困難な事例でも免責許可を勝ち取ってきています。免責不許可事由があるのではないかが心配な方は、当事務所がサポートいたしますので、是非ともお気軽に相談ください。