相手が養育費を支払わない!回収方法を弁護士が解説!
- 債権回収
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離婚したときに養育費の約束をしても、その後支払を受けられなくなることが多いです。ただ、きちんと対応すれば、養育費が支払われる可能性はかなり高くあります。そのためには、法律的に養育費を回収する方法について、正確に理解しておくことが大切です。
今回は、相手が養育費を支払わないときの回収方法について、弁護士が解説します。
このページの目次
養育費不払いに有効!離婚時は公正証書の作成を
養育費をより確実に支払わせるには、離婚時に「離婚公正証書」を作成しておくことです。
離婚公正証書とは
離婚公正証書とは、協議離婚合意書を公正証書の形にしたものです。公正証書とは、公務員の1種である公証人が作成する公文書の1つで、非常に信用性が高く、原本紛失や偽造、変造のおそれなどがほとんどありません。
離婚公正証書のメリット
公正証書には「強制執行力」があります。強制執行とは差押えのことです。つまり、相手が養育費を滞納すると、公正証書を使って相手の財産や権利を差し押さえることができます。公正証書を作成していなければ、相手が養育費支払を滞納すると、まずは養育費調停をしなければならないのですが、公正証書があると、その手間を省くことができるので、大きなメリットがあります。
公正証書の作成方法
公正証書を作成するときには、まずは近くの公証役場に申込みをします。全国のどこの公証役場でもかまいません。そして、担当の公証人に、協議離婚の合意内容を伝えます。すると、公証人が必要書類を指示するので、当日までに用意をします。具体的には、運転免許証などの身分証明書、戸籍謄本、印鑑登録証明書、財産に関係する書類等が必要です。
日程を調整して、公正証書を作成する日にちが決まるので、決まった日に相手と共に公証役場に出頭すれば、その場で作成してもらえます。
代理人によっても公正証書を作成することは可能で、弁護士に作成手続きを依頼して頂くことも可能です。
養育費調停をする
離婚時に公正証書を作成していなかったときに、相手が養育費を支払わなくなってしまったら、家庭裁判所で「養育費調停」をしなければなりません。公正証書以外の普通の協議離婚合意書で養育費の金額や支払方法を定めていても、同じです。通常の当事者同士が作成した、単なる協議離婚合意書には、強制執行力がないからです。
養育費調停を起こすときには、相手の住所地の管轄の家庭裁判所で「養育費調停」を申し立てる必要があります。調停では、裁判所を介して相手と話合いをすることになり、合意ができたら調停が成立して、相手から支払を受けられるようになります。このとき、裁判所で「調停調書」が作成されて、当事者宛に送られてきます。
合意ができない場合には、手続きが「審判」に移行して、裁判官が養育費の金額を決定し、相手に対して支払い命令(審判)を出してくれます。審判が出ると、裁判所から「審判書」が送られてきます。
これらの調停調書や審判書を使うと、相手の資産や給料を差し押さえることができます。
差押えで養育費不払い分を回収
公正証書を作成した後や、調停や審判があっても相手が養育費の支払をしないときには、相手の財産や債権を差し押さえる必要があります。離婚調停や離婚訴訟で養育費の支払いが決まっている場合も同じです。
以下では、差押えの手順を説明します。
送達証明書、執行文を入手する
まずは「送達証明書」と「執行文」という2種類の書面が必要です。送達証明書とは、公正証書や調停調書などの債務名義が相手に届いていることを裁判所や公証人に証明してもらうための証明書です。執行文は、「強制執行ができます」と言うお墨付きの文書です。
公正証書の場合には公証役場に、調停調書や審判書などの場合には、それらを発行してくれた家庭裁判所宛に申請をすると、発行してもらうことができます。
何を差し押さえるか決める
差押えをするときには、何を差し押さえるのかを決めなければなりません。審判や判決などで相手に対して支払い命令が出ていても、裁判所が相手の資産状況を調べてくれることはなく、債権者が自分で差し押さえる対象を特定しなければならないからです。
養育費を滞納されたときに有効な差押え対象は、給料と預貯金と生命保険です。これらについて、説明をします。
給料
相手が会社員や公務員、アルバイトなどをしている場合には、給料差押えが非常に有効です。養育費請求のために給料を差し押さえる場合、将来分の給料も差し押さえることができます。つまり、いったん給料を差し押さえると、その後給料が入るたびに、そこから必要な支払を受けることができるのです。ボーナスも差押え対象となるので、滞納されていても、ボーナス月が来たら一気に回収することが可能となります。
また、一般的な貸金などの債権の場合、給料差押えが認められるのは手取りの4分の1の金額ですが、養育費請求の場合には、手取りの2分の1の金額まで差し押さえることができるので、より効果的に未払分を回収することができます。
さらに、給料を差し押さえられると、相手は職場で居心地が悪くなるため、「任意に支払いをするから差押えを取り下げてほしい」と頼んできて、滞納状態が解消されることもあります。
預貯金
相手が給与所得者ではない場合、預貯金の差押えが有効です。預貯金は、銀行の支店ごとの差押えとなりますので、相手が預貯金をもっている銀行名と支店名を特定しなければなりません。銀行名と支店名さえわかれば、預金の種類(普通か定期かなど)、口座番号などの細かい情報は不要です。
預貯金を差し押さえると、差押えの基準日に口座内に残っていた残高から、一気に回収することができます。相手がお金を貯めているメインの口座や入金を受ける口座などを知っていたら、とても有効な方法です。
生命保険
生命保険も、差押え対象として有効です。生命保険を差し押さえると、生命保険の「解約返戻金」から取り立てを行うことができます。解約返戻金とは、積立型の生命保険において、途中解約すると受けとることができるお金です。掛け金の高い生命保険や長期間加入している生命保険の場合に高額になりやすいです。
生命保険を差し押さえると、その生命保険は強制的に解約されることとなります。差押えの際には、できれば保険の種類や保険証書の番号などを把握しているとスムーズですが、最低限、相手の氏名、生年月日、住所と保険会社が判明していたら、差し押さえをすることができるケースが多いです。
その他の差押え対象について
相手に上記のような債権がない場合には、他のものを差し押さえることを検討します。たとえば相手が自営業者なら売掛金債権、株式取引をしていたり投資信託があったりすると、そういったものも差し押さえることができます。
また、相手が不動産を所有している場合、不動産の差押えも可能ですが、多額のローンがついている場合には、競売をしても認められないことが多くなります。
差押えの申立をする
何を差し押さえるかを決めて必要な書類が手元に揃ったら、差押えの申立を行います。給料も預貯金も生命保険も「債権」の1種ですから、申立の内容は「債権差押え命令申立」となります。
債権差押え命令の申立は、相手の住所地を管轄する地方裁判所にて行います。調停や離婚裁判を行った家庭裁判所とは異なるので、注意が必要です。
申立の際には、以下の書類が必要です。
- 申立書
- 当事者目録
- 請求債権目録
- 差押え債権目録
- 送達証明書
- 執行文
- 戸籍謄本や住民票が必要になるケースもあります。
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