債権回収会社とは?利用の際の注意点を知っておこう!
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家賃や売掛金など、いろいろな債権が発生することがありますが、ときにはこうした債権が不払いになってしまうことがあります。債務者が逃げてしまった場合などには回収の方法がなくなってしまいますが、そんなとき「債権回収会社」を利用する方法が考えられます。
今回は、債権回収会社の概要と、利用のメリット・デメリットについて、弁護士法人YMPの弁護士が解説します。
このページの目次
債権回収会社とは
債権回収会社とは、国の許可を受けて他人の債権回収を受託し、業務として債権回収を行う業者のことです。焦げ付いた債権を安値で買い取り、それを独自のノウハウで回収することによって収益を上げています。
ただ、誰でも債権回収業を行っても良い、というわけではありません。債権回収では、ときとして暴力的な方法が使われるケースなどもあり、自由に認めることはできないからです。そこで、債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)という法律が制定され、法務大臣による許可を受けた業者しか、債権回収業を行うことができないこととなっています。
債権回収会社として許可されるための基準は、以下のようなものです。
- 資本金5億円以上の株式会社であること
- 債権回収業の許可を法務省から取り消されたことがある場合、5年以上が経過している
- 取締役に弁護士を選任すること
- 暴力団が関与していないこと
- 過去に債権回収業に関する特別措置法や弁護士法によって罰金刑を受けた場合、その後5年以上が経過していること
- 取締役や執行役に成年被後見人、被保佐人、復権していない破産者、禁固刑以上の刑に処せられて、執行終了から5年未満の人などが入っていないこと
- 商号に「債権回収」が入っていること
許可なしに債権回収業を行うと罰則が適用され、3年以下の懲役または300万円以下の罰金、あるいは併科となります(サービサー法3条)。
債権回収会社への依頼方法
債権回収会社に債権回収を依頼する方法は、2つあります。1つは債権回収の委託、もう1つは債権譲渡です。
債権回収の委託
債権回収を委託する場合には、債権回収会社に代わりに債権回収をしてもらいます。債権自体を債権回収会社に譲渡することはないので、支払いが行われた場合には、もともとの債権者が受けとることができます。ただし、債権回収会社には手数料を支払う必要があります。
債権譲渡
債権譲渡は、債権そのものを債権回収会社に譲渡してしまうことです。そこで、もともとの債権者は権利を失います。お金が支払われた場合、そのお金は債権回収会社の元に入ることになります。
債権者は債権回収会社に対して債権を売却することになりますから、売却代金を得ることができます。
債権回収会社が回収できる債権の種類
債権回収会社による債権回収は、サービサー法によって特別に認められたものですから、どのような債権でも回収できるというものでもありません。回収が認められるのは、以下のような、「特定の金銭債権」のみです。
特定金銭債権の例
- 通信料
- 物販債権
- リース債権
- クレジット債権
- マンション管理費
- 家賃
- 診療報酬
- その他の債権
特定金銭債権とは、当事者間において目的となるものが特定されている金銭債権のことです。また、債権回収会社は、原則的に一般個人の債権の回収はできません。
実際の取り立て方法としては、郵便による督促や交渉、支払督促や通常訴訟等の裁判手続きを使ったものとなります。闇金のように、執拗な電話や非常識な取り立てをすることは、通常ありません。そのような不適切な行動をすると、許可を取り消される可能性もあります。
債権回収会社に依頼するメリット
債権回収会社に債権回収を任せると、以下のようなメリットがあります。
時間と労力がかからない
まずは、時間と労力を節約できることです。相手がすんなり支払をしない場合、債権回収には多大な時間と労力がかかります。時間をかけて相手を探したり請求をしたりしても、必ずしも支払が行われるわけでもなく、徒労に終わることも多いです。そうなったら、貴重な時間と労力がすべて無駄になります。
債権回収会社に任せたら、自分では一切何もしなくて良くなるので、こうした手間が省けます。
一定程度、債権回収できる
債権回収会社に債権譲渡してしまったら、たとえ回収ができなくても、譲渡代金が支払われます。そのことにより、一定の支払を確保することができます。債権回収会社を使わなければ0円になる可能性も高いのですから、このことも大きなメリットと言えるでしょう。
知識やノウハウがなくても回収できる
一般の法人や個人の方は、債権回収のための知識やノウハウを持っていないことが普通です。滞納されたときにどうしたら効果的に回収できるか、たとえば裁判手続きが必要になったときにどのように進めていけば良いかなど、いちいち調べなければなりません。適切な対応が難しいので、スムーズに進まないことも多いでしょう。
債権回収会社に依頼すると、債権者自身に知識やノウハウがなくても、業者の技量を使って効果的に債権回収することができます。
債権回収会社を利用する際の注意点
債権回収会社を利用するときには、注意点もあります。
手元に残る金額が小さくなる
債権回収会社を利用すると、通常、自社で債権回収をおこなうよりも手元に入ってくるお金は少なくなります。債権回収を委託したときには委託の手数料が発生しますし、債権譲渡をした場合には、額面額よりもかなり低い金額で売却することになるためです。
債権回収会社に依頼する際には、自社で回収するときにかかるコストと債権回収会社にかかるコストを比較することが重要です。
詐欺に遭う可能性がある
債権回収業は、法務大臣による許可を受けたものでないとできないのですが、中には許可を受けていないのに営業をしている無登録業者があります。いわゆる「ヤミ」の業者のことで、金融業者で言うと闇金のようなものです。
こうしたヤミの業者は、本来債権回収業を行う資格がないばかりか、手数料もやたらと高額であったりしますし、きちんと債権回収をしてくれることもありません。また、知らなかったとは言え、犯罪の片棒をかついだ形になってしまいますから、違法業者が逮捕されたときには、債権者も警察から疑われてしまうおそれがあります。そこで、無登録業者にひっかかると、債権者としても大きな不利益を受けることになります。
正式な債権回収会社については、法務局から名簿が発表されています。ここに登録のない業者は利用しないようにしましょう。
http://www.moj.go.jp/housei/servicer/kanbou_housei_chousa15.html
債権回収会社を利用すべきケース
以上を前提として、債権回収会社を利用して債権回収をすべきケースはどのような場合なのか、列挙します。
- ほとんど回収できる見込みがない債権
- 債務者が行方不明
- 債務者が支払わないと開き直っている
- 債務者に財産がなく、強制執行が見込めない
- 自社で債権回収する手間と時間が惜しい
債権回収会社よりも弁護士に依頼するメリット
不良債権があるときには、債権回収会社よりも弁護士に依頼する方が、メリットが大きいことが多いです。
弁護士であれば、債権者が個人であっても回収を受託することができますし(債権回収会社の場合、制限があります)、特定金銭債権に限らず、どのような債権でも回収及び取り立てをすることができます。たとえば、家賃滞納の場合などには、単純に家賃を回収すれば済むというものではなく、明け渡しの強制執行が必要ですが、こういったことまでは債権回収会社では対応できません。
効果的に債権回収をされたい場合には、弁護士のサポートを受けることが役立ちます。焦げ付いた債権があってお困りの場合には、是非とも一度、弁護士法人YMPまでご相談下さい。