通常訴訟による債権回収のポイントとは?
- 債権回収
公開日:
債権回収をしようとするとき、相手とどうしても調整ができない場合には、最終的に訴訟をしなければなりません。訴訟をすると、相手が納得しなくても、こちらが正しい主張をしている限り、強制的に債権回収をすることができるので、とても効果的です。
今回は、通常訴訟による債権回収のポイントについて、弁護士法人YMPの弁護士が解説します。
通常訴訟とは
通常訴訟とは、裁判所に申立をして、法的な主張と立証をすることにより、権利や義務、法的な地位などを認めてもらうための手続きです。民事裁判とも言います。通常訴訟の対象になるのは、民事的な法的トラブル一般です。たとえば、建物の明け渡しや移転登記の請求、騒音や公害の差し止め請求、土地の警戒確定請求、慰謝料請求など、ありとあらゆる法的トラブルについて、訴訟で解決することができます。
もちろん、債権回収についても通常訴訟を利用することが可能です。貸金請求、未払賃料請求、売掛金請求、損害賠償請求など、ほとんどどのような金銭請求であっても訴訟で解決することができます。
訴訟を起こすと、裁判官が、原告(裁判を申し立てた人)の主張に法的な理由があるかどうかを審査して、法的な理由があると判断したら、原告の主張通りの判決をします。判決には法的な効力がありますから、被告(訴えられた人)はその内容に従わなければなりません。裁判所の下した判決には強制執行力がありますから、相手が従わない場合には、判決書を使って相手の資産や債権等を差し押さえることができます。
通常訴訟のメリット
通常訴訟には、以下のような特徴があります。まずは、メリットから見てみましょう。
強制的に権利を実現できる
通常訴訟のメリットの1つ目は、強制的に権利を実現できることです。相手が拒絶しても、裁判所が認めてくれたら、強制的に未払債務の支払いをさせることができます。
トラブルを終局的に解決できる
通常訴訟のメリットの2つ目は、未払債務のトラブルを終局的に解決できることです。調停や支払督促、少額訴訟、ADR等の他の方法では、相手は結論を強制されませんし、異議を出すなどして争うことができます。これに対し、訴訟で決まったことは絶対的です。裁判所の判断について、間違っていると主張して別の機関に判定してもらうことはできません。
通常訴訟のデメリット
時間がかかる
ただし、裁判にはデメリットもあります。1つは、非常に時間がかかることです。通常訴訟をすると、内容にもよりますが、だいたい半年くらいはかかってしまいます。
労力がかかる
通常訴訟には、非常に労力がかかります。法的な主張をまとめた書面を作成する必要もありますし、裁判所に提出する証拠も集めないといけません。何度も期日を重ねて主張と立証の応酬を行い、最終的に尋問を受けなければなりません。
敗訴リスクがある
訴訟をしても、必ず勝てるとは限らないことにも注意が必要です。このことを、敗訴リスクと言います。訴訟は、基本的に勝てば100%ですが、負ければ0%の手続きです。主張に無理な点がある場合や証拠が不十分な場合には、訴訟をしても債権回収できない可能性があります。
通常訴訟を利用すべき場面
通常訴訟は、以下のようなケースで利用しましょう。
- 相手が話し合いに応じないとき
- 話合いが決裂したとき
- 調停が不成立になったとき
- 支払督促に異議申立があったとき
- 少額訴訟に異議を出されたとき
- ADRで解決できなかったとき
通常訴訟を起こす方法
通常訴訟を起こすときには、まずは訴状を作成する必要があります。訴状とは、相手に求める請求内容と、請求の理由を法的にまとめた書類です。訴状は、申立の基本となるものですから、内容が不適切であると、そもそも訴訟を裁判所で受け付けてもらえません。もちろん、勝訴することもできませんから、正確に法律要件に従って作成しましょう。
また、証拠も必要です。提訴前に、綿密に証拠を集めておきましょう。
訴訟を申し立てるときには、費用も必要です。必要なのは、収入印紙と郵便切手です。収入印紙は、請求金額によって変わり、請求金額が大きくなるほど高額になります。郵便切手は、連絡用に使うものです。裁判所にもよりますが、だいたい6000円~7000円程度です。裁判所の書記官に金額と内訳を聞いて用意しましょう。
通常訴訟の流れ
提訴
通常訴訟を起こすときには、まずは訴状と証拠、印紙や郵便切手を揃えて裁判所に提訴します。請求金額が140万円以下であれば簡易裁判所、140万円を超える場合には地方裁判所を利用します。
呼出状が届く
提訴すると、しばらくして裁判所から第1回期日の呼出状が届きます。この頃、被告にも同じように呼出状が送られています。弁護士に依頼している場合には、弁護士から第1回期日の連絡を受けることになります。
被告から答弁書が提出される
第1回期日前に、被告から答弁書が提出されるのが普通です。答弁書には、相手の反論が書いてあるので、相手がどのようなことを主張しているのか、確認しておきましょう。
第1回期日が開かれる
第1回期日には、原告と被告が出頭し、裁判所ではそれぞれが提出した書面の内容を確認します。そして、次回までに用意すべき事項を定めます。被告が答弁書で詳しく反論をしていた場合には、2回目までに原告が再反論をすることになります。
通常訴訟の第1回期日は、5分~10分程度で終わってしまうことが普通です。弁護士に手続を依頼していたら、本人が出頭する必要はありません。被告も弁護士に依頼している場合、被告も出席しないことが多いです。
第2回以降の期日
第2回目以降の期日では、原告と被告の主張の整理を行っていきます。お互いが相手に反論をしたり証拠を出したりして、裁判官がケースごとの争点をまとめていきます。
期日は、だいたい月1回程度開かれます。これらの期日を「弁論準備期日」と言いますが、弁護士に手続を依頼している場合、弁論準備期日にも、当事者本人は出頭する必要がありません。
尋問
争点を整理できたら、証人尋問や当事者尋問を行います。証人がいたら証人尋問をしますし、必要があったら原告や被告本人への当事者尋問をします。尋問がある日には、本人も必ず出頭しなければなりません。尋問を受けるときには、まずは依頼している弁護士からの主尋問があり、その後相手の弁護士からの反対尋問を受け、最後に裁判官から確認の質問を受ける、という流れになります。
尋問の結果は判決に大きく影響するので、非常に重要です。尋問前には、依頼している弁護士と綿密に打ち合わせをして、準備を整えておく必要があります。
判決
尋問が終わると、弁論が終結して結審します。その後1ヶ月くらい後で、裁判官によって判決言い渡しがあります。判決が出ると、弁護士が判決書を取り寄せて本人に送付します。そこで、判決の内容をしかりと検討して、不服がある場合には高等裁判所(1審が簡易裁判所の場合には地方裁判所)あてに控訴する必要があります。
弁護士が必要か?
「訴訟を起こすときには、弁護士が必要でしょうか?」という質問を受けることがよくあります。
基本的に、弁護士なしで訴訟を進めることは難しいです。訴訟は、非常に専門的な手続きであり、法的な知識や専門的なノウハウが要求されますので、弁護士なしで訴訟を起こすと、敗訴の可能性が大きく高まってしまいます。特に、自分に弁護士がなく、相手にのみ弁護士がついていると、非常に不利になってしまいますから、訴訟をするときには、必ず弁護士に依頼しましょう。
訴訟をするときには、弁護士法人YMPまでご相談ください
通常訴訟は、債権回収を図るときの最終手段として非常に有効です。ただし、適切に進めないと、負けてしまっては何の意味もありません。訴訟を有利に進めるためには、有能な弁護士によるサポートが重要です。
弁護士法人YMPは多数の事案において、訴訟で債権回収してきた実績ある事務所です。これから訴訟を起こそうとしているなら、是非ともお早めにご相談ください。