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自己破産をすると「退職金」がなくなる?会社に知られない方法は?

  • 債務整理

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自己破産をすると、債務者のさまざまな財産がなくなってしまいます。その中でも問題になりやすいのが、「退職金」です。自己破産をするときには、「退職金」も財産として評価されてしまいます。ただ、退職金を全額取られてしまう、ということではありません。

また、退職金の金額を証明するためには「退職金証明書」が必要となりますが、この書類の取得に際し、会社に自己破産のことを知られないよう、注意する必要があります。

今回は、自己破産するときの「退職金」の取扱いについて、弁護士法人YMPの弁護士が解説します。

自己破産するとき、退職金が財産扱いとなる

自己破産をすると、破産者が所有している財産のうち、生活に必要な最低限度のものを超えるものは、基本的にすべて失われることになります。そこで、おおむね20万円を超える預貯金や生命保険、車などの財産や99万円を超える現金については、破産管財人に引き渡さなければならず、破産者が持ったまま破産することができません。

そして、破産者が会社員や公務員などの場合、退職金も財産扱いされてしまいます。退職金が問題になるのは、おおむね5年以上の勤務歴がある場合です。就職したばかりのケースでは、退職金の金額が大きくならないため、自己破産をしても退職金が問題となることはありません。

退職金の取扱い

それでは、自己破産手続きにおいて、具体的には退職金がどのように取り扱われるのか、確認していきましょう。

退職しなければならないという意味ではない

まず、退職金が財産扱いされるとしても、「退職しなければならない」、という意味ではありません。退職金が財産扱いになる、と言われると、「退職して退職金をもらい、それを裁判所に支払わなければならない」と思ってしまわれる方がいるのですが、そういったことは一切ありません。退職するかどうかは破産者の自由に任されています。

会社員や公務員は、勤務先に対し「退職金の請求権」という債権を持っています。自己破産するときには、この「退職金請求権」の評価をして、その一定割合に相当するお金を、管財人に渡せば良いことになっています。つまり、お金さえ渡せば、実際に退職をする必要はないのです。

そして、退職金請求権の評価方法は、ケースによって異なります。以下では、すでに退職金を受けとっている場合、退職金を受けとる時期が間近な場合、退職金を受けとるのが遠い将来の場合の3つのパターンに分けて、退職金の取扱い方法を説明します。

すでに退職金を受けとっている場合

すでに退職金を受けとっている場合には、会社に対する退職金請求権はなくなっており、退職金は、預金などの別の資産の形に変わっています。振り込まれた預金のまま置いていれば預金ですし、そのお金で不動産を購入したり住宅ローンを完済したりしたなら不動産の形になっています。投資信託や株を購入すると、そうした資産の形になります。

預金や不動産、株などの資産については、全額が破産手続きにおける換価配当の対象になります。こうした財産はすべて失われることになるということです。そこで、すでに退職金を受けとっている場合、破産手続き開始決定時に残っている部分については100%、なくなってしまいます。

なお、退職金を受けとった後、生活費その他のいろいろな出費により使ってしまった場合には、残っている部分だけが破産手続きでの換価の対象になります。退職から日にちが経過していて、ほとんど残っていないなら、退職金が自己破産でなくなることはありません。

近日中に退職する場合

近日中に退職する予定が明確になっている場合には、退職金見込額の4分の1が、換価の対象になります。退職金については、4分の3の部分が「差押禁止債権」とされているからです。差押禁止債権とは、債務者の生活にとって重要なので、法律によって差押えが禁止されている債権のことです。

そこで、近日中に退職する予定が明白であっても、差押禁止部分の4分の3は換価の対象にすることができず、残りの4分の1のみが換価の対象となります。この場合、退職金見込額の4分の1の金額を、現金で破産管財人に支払う必要があります。

退職が遠い将来の場合

サラリーマンや会社員であっても、若い方の場合には、退職は遠い将来のことです。

このような場合、実際に退職金が入るかどうかが不明確です。途中で会社が倒産するかもしれませんし、退職金規程が変更される可能性もあります。退職前に死亡するかもしれません。そこで、退職時期が遠い将来の場合には、退職金取得の蓋然性が低くなることに鑑みて、現在の退職金見込額の8分の1を、財産として評価します。退職金見込額の8分の1の金額を破産管財人に支払うと、実際に退職しなくても、自己破産が認められます。

退職金見込額を証明する方法

退職金証明書を取得する

以上のように、まだ退職していない場合には、退職金見込額を明らかにする必要があります。退職金見込額とは、「もし現在退職したら、いくらの退職金がもらえるのか」という金額のことです。

退職金見込額は、どのようにして証明するのでしょうか?

これについては、勤務先に証明してもらうことになります。退職金は、勤務先が支給するものですから、勤務先に証明してもらうのが一番確実だからです。具体的には、勤務先に「退職金証明書」を発行してもらう必要があります。

退職金証明書の取得方法

退職金証明書を取得したいときには、会社の担当部署に「退職金証明書」の発行を依頼する必要があります。すると、会社が退職金見込額を計算して、「〇〇氏が現在退職した場合の退職金見込額は〇〇円です」と記載した退職金証明書を発行してくれます。

ただ、この場合、退職金証明書が必要な理由を説明するように要求されることが多いです。そのとき「自己破産するため」「裁判所に提出するため」などと説明すると、会社に自己破産することを知られてしまいます。なるべくなら、会社には自己破産を知られたくないでしょうから、このようなことは大きな問題となります。特に、公務員や金融機関などの場合、自己破産したことを勤務先に知られると、仕事を続けにくくなってしまうおそれが高くなってしまいます。

会社に自己破産を知られたくない場合の対処方法

退職金証明書を取得する際の説明を工夫する

会社に自己破産を知られたくないなら、退職金証明書を依頼するとき、以下のような説明をすると良いです。

  • 住宅ローン借り入れをするために銀行に提出する
  • 保証人になるために必要と言われた

実際に、ローン審査を行うときに退職金証明書を要求する金融機関もあるので、こういった弁解方法を使うと、会社に怪しまれることはないでしょう。

自分で退職金見込額を計算する

もう1つの方法としては、自分で退職金見込額を計算する方法です。

会社に退職金制度がある場合、退職金規程がもうけられているはずです。そこで、退職金規程にあてはめて、自分で退職金の計算をすると、退職金見込額を明らかにすることができます。各地の裁判所においても、退職金見込額の証明方法として、退職金規程と計算書の提出による方法が認められています。たとえば公務員の場合、退職金の計算方法が明らかになっているので、この方法は非常に有効です。

また、会社が退職金証明書の発行に協力してくれない場合にも、非常に便利な対処方法となります。

以上のように、自己破産をしても、実際に退職しなければならないということはなく、退職金が全額なくなることも少ないです。ただ、退職金証明書を取得するときには、会社に自己破産を知られやすいので、注意が必要です。退職金規程が明らかであれば、自分で退職金見込額を計算する方が安心だと言えるでしょう。

弁護士法人YMPでは、借金にお困りの方のため、自己破産を始めとした債務整理の手続きに非常に力を入れています。退職金が失われることが心配な場合や、退職金の計算方法がわからない場合など、弁護士が適切にアドバイスします。

借金問題にお困りの場合には、是非ともお早めにご相談下さい。